病院・診療所に勤務した看護師で中皮腫を発症した方が、すでに日本には6名以上います。原因は大きく3点あり、石綿製造工場の近隣の病院や受診した労働者、手術関連でのタルク使用作業、病院自体の吹付け石綿からの曝露です。
石綿製造工場から曝露
工場の近くの病院や診療所の勤務した看護師が、工場から流れ込む空気に混入した石綿を吸ったり、石綿が付着した作業着を着て受診した従業員の衣服から石綿に曝露したものです。
タルクからの曝露
手術用等の手袋内に、吸湿・すべり止め目的で添加したタルクの中に石綿が混入していた時期があり、そこから曝露したものです。看護師だけでなく、中央材料室で勤務していた看護助手も石綿に曝露した可能性があります。
病院の建物からの曝露タイトル
1990年代までに建てられた病院の多くには、耐火、断熱、吸音などの目的で、ボイラー室、手術室の天井裏やダクト等などに吹き付け石綿、壁や天井に石綿を含んだ建材が使用されています。
石綿によって起こる疾患
中~高濃度の石綿に長期曝露すると、石綿肺や石綿肺癌になる可能性があります。短期間の低濃度曝露でも胸膜中皮腫や良性の胸膜プラーク(肥厚斑)が起こりえます。石綿関連疾患の潜伏期間は20~50年以上の場合が多いので、胸膜中皮腫を発症する可能性があるのは、昭和30年代~昭和60年代に石綿に曝露した方です。看護師業務では、石綿肺や石綿肺癌を起こすほど、石綿に曝露することは極めて稀だと思われます。なお、肺がんや中皮腫は、石綿に曝露したうちの数%以下にしか発症しないので、過度に心配する必要はありません。石綿を吸ったかどうかは、エックス線検査ではわかりません。
石綿に曝露した可能性のある方の健康管理
過去に手術室でタルク作業などで、石綿に曝露した可能性のある方は、石綿に曝露し始めた時期から20年位のちに、胸部レントゲン写真によって肺がんや中皮腫を発症していないか毎年確認しましょう。すでに初めの曝露から20年以上経て、ご心配な方は、石綿関連疾患に詳しい医師を受診して下さい。その結果、胸膜プラーク等が見つかった場合は、胸部CT写真を行います。国の制度である石綿健康管理手帳支給の対象となる場合もありますので、詳しくはアスベストセンターにご相談ください。
看護師が中皮腫になった場合
看護師は、病院建物や業務から石綿に曝露する可能性があるので、看護師の中皮腫はほぼ労災の対象になります。中皮腫を発症した場合、石綿救済法より労災のほうが、補償が手厚いので、労災を申請してください
非営利団体アスベストセンターは、建物の石綿含有相談、石綿関連疾患に詳しい医療施設の紹介、中皮腫の労災申請支援などを無料で行っています。有料ですが、建材の石綿含有検査も行っています。