情報提供

 患者さんが知りたいと思う中皮腫についての情報はまだ不足しています。その一方でインターネットによるがんに関する情報が溢れている現代では、患者さんや家族は情報に振り回されます。中皮腫に関する適正な情報を示すことで、患者さんの「知りたい」というニーズに応え、意思決定や治療選択を支えることができます。

セカンドオピニオンの勧め

 中皮腫が急増したのはこの20年間で、診断や治療経験が豊富な医師は多くはありません。患者さんが納得して診断を受け止め、希望する良い治療法を選択し、自分に合った医療スタッフと出会うために、セカンドオピニオンを受けることは有益です。「先生に申し訳ない」と思う患者さんもいますが、迷いのうちに治療を始めることは、患者さん御本人にとっても、医療スタッフにとっても良い結果にはなりません。いろいろな医師の意見を聞くことで、その後の治療が円滑に進むこともあります。診断期に限らず、患者さんや家族が迷った時はセカンドオピニオンを勧めてあげましょう。

こころの状態に注意する

 がん患者の多くが、不眠や抑うつを経験します。生命の危機を宣告されれば、当然のことです。中皮腫の治療に集中するあまり、こころの状態にまで目が行き届かなることがあります。患者さんやご家族が、不眠や抑うつ傾向にないかをチェックし、必要に応じて医師に処方やカウンセリングを提言するのは看護師の重要な役割です。

緩和ケアの勧め

 胸膜中皮腫が進行すると、呼吸困難と痛みが出現します。症状が出現すると進行が速いので、痛みや苦しさが出た時にすぐにケアが受けられるように早めに連携体制をとることを勧めます。患者さんは「緩和ケア=間近な死」と考えて嫌がる方もいますが、中皮腫や治療の後遺症によっておこる痛みや呼吸困難などの不快な症状に備えるプロフェッショナルとして見守ってもらうと良いかもしれません。

社会保障制度申請の勧め

 職業に由来する中皮腫は、労災の対象に、それ以外の中皮腫は救済法の対象になります。中皮腫の治療には高額な医療費がかかりますので、このような制度を利用することは、患者さんと家族にとって大きな負担軽減になります。そのためには、申請手続きが必要ですが、必要な書類を準備し、申請が認められるまでには意外に時間がかかります。中皮腫患者の予後は短いので、早い時期に手続きを始めることが重要です。慣れない手続きは患者さんにとって負担になりますが、手続きを支援する団体に手伝ってもらえば負担を軽くすることができます。

寄り添うこと

 中皮腫は予後が悪く、患者も家族も打ちのめされる病気です。絶えず付きまとう死への恐怖、なぜ自分だけがという思い。この治療法でよいのか?という迷い。再発への不安など、絶えず不安が付き纏います。中皮腫を完治することは難しいのが現状ですが、看護師が、「いつもそばにいる。」という姿勢を示すことで、患者さんと家族は勇気づけられます。看護師に、わからないことを尋ねる、医師に言いにくいことを代弁してもらう、相談にのってもらう、話を聞いてもらうことができることを伝えてあげましょう。

家族のケア

 中皮腫は、症状が安定して自宅療養できる期間が短いので、患者さんも家族も、気持ちを緩める時期がありません。診断から治療と、ご家族は患者さんを支えながら、一緒に苦しみます。病気がどんどん進むうえ、慣れない社会保障制度申請などの負担も加わり、家族に解決しきれない問題や課題がどんどん突き付けられます。このような場合、看護師からは、家族の理解が悪いように見えたり、患者さんのケアに非協力的だと映ることがあります。家族もまた、支援を必要としていないかという眼差しが求められます。

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