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中皮腫とは

 胸膜中皮腫は、胸膜に発生する悪性腫瘍です。我が国では、20年前までは年間100人ほどが亡くなる珍しい疾患でしたが、近年急増し、年間1000人以上の方が亡くなるようになりました。今後も患者数は増加すると考えられており、2000年から40年間で男性だけでも10万人が死亡するという予測もあります。これまで胸膜中皮腫のほとんどがアスベスト(石綿)でおこることから、ごく一部の人に発症する職業性疾患として扱われてきました。
 しかし、近年のアスベスト製品工場周辺住民における多数の胸膜中皮腫発生により、職業にかかわらず一般住民でも胸膜中皮腫が発生する危険があることがわかり、人々のアスベストに対する不安が高まりました。胸膜中皮腫の診断技術が進歩したことや、アスベスト関連疾患に対する不安をもつ人々が受診したことにより、現在では全国の医療機関で胸膜中皮腫の診断や治療が行われるようになりました。
 しかし、胸膜中皮腫という新しい疾患についての詳しい看護学教材やケアのガイドラインがないため、医療現場の看護師は、独自で情報を収集したり、肺がんなどの治療経験を頼りにするなどして、ケアを行うしかありません。そのため、多くの看護師が知識不足のために自信を持ってケアを行えず、ケアにおいても様々な問題を抱えています

中皮腫という病気

 中皮腫は、中皮腫細胞にできる悪性腫瘍です。「がん」は上皮細胞に発生する悪性腫瘍をさしますので、中皮細胞にできた悪性腫瘍は「がん」とは呼びません。しかし、悪性疾患であることに変わりはありません。中皮は、肺の周囲、腹部の周囲、心臓の周囲、精巣の周囲にあります。

発生臓器

 中皮腫のおよそ7~9割は胸膜に、残りの大半が腹膜に出来ます。その他にごくまれに心膜や精巣しょう膜にできることがあります。胸膜は、薄い膜で、肺を覆う臓側胸膜と胸腔(きょうくう)を覆う壁側胸膜からなります。臓側胸膜と壁側胸膜はつながって胸腔をつくっています。胸膜中皮腫はこの胸膜にできる悪性腫瘍で、壁側胸膜に発生し、臓側胸膜、肺へと広がっていきます。

予後

 中皮腫の予後は悪く、我が国の胸膜中皮腫の2年生存率は29.6%、5年生存率は3.7%です。
三浦ひろ太郎中皮腫ー臨床、森永謙二編「職業性石綿曝露と石綿関連疾患」改訂版、三信図書、2005

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